小さな恋のものがたり

『だから大好き!』から『小さな恋のものがたり』になった理由

1972年 NTV『だから大好き』がスタート。

 主人公は南の国のお姫さま、そのフィアンセは王子様という設定
で、岡崎友紀のリリース曲がふんだんに盛り込まれた、歌のプロモ
ーションのようなシーンの多いドラマだった。

 テレビ局、製作会社、レコード会社、音楽出版社などの関係各所
には利のある番組なのだが、ドラマとしては今一つ、内容の薄いも
のだった。

 撮影が始まってほどなく、この内容のドラマを半年続けることに
不安を抱いた岡崎友紀は、2クール(6ヶ月)の予定の後半の3ヶ
月を、『小さな恋のものがたり』にしてはどうかと、番組プロデュ
ーサーに相談を持ちかけた。

 相手役の沖雅也と自分の身長差は、漫画のイメージにピッタリで
あること、長い年月、少女たちの人気を集め続けているヒット漫画
であること、などを説明した。スポンサーへの問題、局の編成、あ
らゆる困難を抱えることになるので、番組プロデューサーが難色を
示したのは勿論である。

 しかし、同時期にTBSで放送されていた岡崎友紀主演の『なんた
って18歳!』の視聴率との比較や、『だから大好き!』の内容に
対しての視聴者からの評判が今ひとつであるということもあり、プ
ロデューサーは番組内容の変更という、前代未聞の苦渋の決断を下
した。

 主題歌も同じ、相手役も沖雅也のままで、後半の1クールは、岡
崎友紀の提案を呑む形で、『小さな恋のものがたり』が放送された。
大変な苦労を抱えての番組の変更で、プロデューサーは非常に辛い
思いをしたであろう。岡崎友紀も、提案の実現に感謝し、それに応
えるべく演技に熱を入れた。

 その結果、岡崎友紀のチッチと沖雅也のサリーのピュアで切ない
恋ものがたりは、当時の少年少女の心に深く刻み込まれることとな
った。たった13話の放送だったが、このドラマの熱烈なファンは
多く、50年以上の歳月が過ぎた今も、「ちい恋ばなし」に花を咲
かせる人々がいる。

 これこそ、テレビドラマを提供する担い手冥利に尽きるのではな
いだろうか。
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